コワーキング・アドベントカレンダー2011に参加しており、本記事は同イベントに向けて書いたもの。日替わりでコワーキングについてリレーブログが展開されている。
2011年7月より今まで務めていた会社を辞めてフリーランスの身として独立、PAX Coworking(以下PAX)に入居し、僕の本格的なCoworkingライフが開始となった。元々2010年8月にPAXで開始された日本初のJelly以降、PAXや下北沢OpenSource Cafeをはじめとする数多くのJellyには参加してきたが、独立以降のCoworkingでは物事がそれまでとは比べ物にならないほど急速に流れ始めた。
独立時に漠然と周囲に話はじめたビジョン…まだまだデザインとの融合度が低い日本のTech系企業に対し、適切なデザインサービスを提供することで世界と戦っていただけるようにお手伝いするというものである(目標としてMetaLabやFacebookに買収されたSofaなど)。もちろん最初から具体的な手がかりは無く「長期的に」そうしたいという思いだったが、結論から先に言えば、僅か半年で非常に強い手応えを感じ、道筋ができはじめていると感じる。そして、その実現にはCoworkingが非常に密接に関係している。
以下にいままでの事例を駆け足で紹介、それらとCoworkingがどのように関わったかを中心に話をしてみたい。
■Startup Weekend – CookingDJチームでの優勝
転機の1つが「Startup Weekend」というイベント。金・土・日でほぼ初対面のメンバーがチームを作ってStartup起業プランを練り、プロトタイプを創って最終日にプレゼンをするという、なかなか無茶な内容である。
当初は参加するかについてはかなり様子見だったが、Coworking関連の仲間である地藏さん(@chshii)や堀江さん(@kenji904)が参加した事や、マクラケン直子さん(@naokomc)が運営者と仲が良かったことから背中を押され、PAX入居メンバーであるジャッキー山川さん(@JackieYamakawa)も含め会場へ。いってみると、僕ら以外も下北沢OpenSource Cafeや新橋フィルポートでお会いした方々など、多くのCoworking関連の方々がいて、ほぼホームな雰囲気。
結果はCookingDJチームで見事に1位となり、優勝。他にもMovida賞の受賞や参加者が選ぶOne to Watch賞をいただく結果となった(詳しくは別記事へ)。この受賞などを元にStartupな世界が非常に身近になったのは事実である。
残念ながらCookingDJプロジェクトは継続する形にはならなかったが、その後に僕は2位だったremembAR.meチームに合流することになった。
■Crowyリニューアル版でのコラボレーション
成果という意味で、一番大きかったのがCrowyリニューアル版のコラボだろうか。独立前にCoworkingを通じてco-meetingの吉田さん(@yuya_lush)とお会いしたことがキッカケとなり、手始めにco-meetingのランディングページそして、同社のTwitterやFacebookなど様々なソーシャルメディアをマルチカラムで管理するCrowyのリニューアルに参加…とCoworkingがコラボの入り口になっている。
その後Crowyについては、OSSの河村さんや僕の提案なども反映し、よりFacebook機能を強化したリニューアル版を開発することに。僕はユーザーインターフェースのほか新しいロゴなどのビジュアル・アイデンティティ開発にも協力することになった。
当初は遠隔でのコラボだったが、その後同じ場所を共有した方が効率的…とCrowy開発者の木村さん(@a_kimura)がPAXに頻繁にドロップイン。その後Crowy開発以外でもメリットを感じたこともあり、木村さんはPAXメンバーの1人となる。彼自身も「起業のファイナンス」読書会イベントを企画するなど独自の活動をPAXで行なっている。
Crowyはリニューアル後、かなりユーザー数を増しており、LifeHackerやソーシャルウェブが拓く未来などの有名なメディアに掲載されるなど露出度がかなり高まっているほか、Coworkingの成果事例としてNHKでも放映されることに。
Crowyリリース後にはPAXを運営する佐谷さん提案による「黒い」パーティーをパクチーハウス東京で開催、Startupと飲食店の面白いコラボなどが実現したことも非常に面白い成果だと感じている。
CrowyはGoogle Chrome Web Storeで無償公開されているほか、www.crowy.netにアクセスすることで利用可能。(ブラウザはChromeのほかFirefox, Safariに対応)
■remembARチームへの参加とプロダクト公開開始
前述のStartup Weekend系の話からremembARチームへもデザイナーとして参加することが決まった(途中remembAR.meからremembARに改称)。このアプリはAndroid端末をかざすだけで顔認識技術を使ってFacebookフレンドの名前を画面表示、チェックインするという、ちょっと近未来的なモノ。同プロダクトはStartup Weekend TokyoでMost Innovative賞、そしてTechWaveのDebutDay2で優勝を果たしているほか、Mashup Award 7での授賞式出場依頼を受けており、何かしら賞をいただける模様。
僕はユーザーインターフェースのほか、ロゴなどのビジュアル、そしてWeb制作を担当している。このチームメンバー自身は元々Coworking関連という訳では無いが、その後に代表の麻植さん(@OE_uia)などが積極的に下北沢OpenSource CafeやPAXなどに出入りするようになり、今ではチームの方々がCoworking関連の繋がりを持っている(というか、引き入れた感もあり)。
remembAR開発にあたっては当初より様々なJellyの場でデモやプレゼンが行われ、α版当初から様々なフィードバックがCoworkingに集まった方々より寄せられている(←こうしたフィードバックは素晴らしく参考になる)。
また、remembARチームメンバーもJellyに対して協力的で、以前にOSS CafeでスマフォJellyを行った際にはremembARのほか、メンバーによるArtIMEやいいねブックのデモなども行われた。AndroidやiPhoneアプリ開発などに、チームとCoworkingの関係はこれからも進みそうだ。
remembARはPublic Beta版がAndroid Marketより11月30日より公開されており、無償でダウンロード可能となっている。
■nanaプロジェクト
nanaを端的に言い表せば、歌声・音声のInstagramである。iPhoneのマイクで収録した音声にフィルター加工して、フィードで公開する。フィルターにはエコーのようなベーシックなものから男声→女声変換や、Perfumeのような効果を出すものなども。
さらに、コラボ側面としてフィードで公開された他の人の歌声にオーバーダブ機能を使っハモることや合唱することも可能にするもの。11月29日に行われたTechCrunch Tokyo 2011のStartup Battleに出場しているほか、テレビ東京の「モーニングサテライト」でもCoworkingの事例として紹介されたほか、12月11日刊の日経MJ(日経流通新聞)にてCoworking事例として掲載される予定。
nana主宰の文原さん(@unyuho)と僕の出会いからCoworkingが関わっている。神戸在住だった彼はCahoozという当地のCoworkingスペースに出入りしたことから、Coworking仲間のネットワークを経て知り合い、デザイナーを必要としているという話から一緒に仕事をすることになった。
現在、文原さんは東京に居を移し、PAXメンバーになっており、PAXのスペースにて他のメンバーも含めた開発が急ピッチで進行している。さらに2012年にはnanaをリリース、米国での会社登記を目指す予定が進行しており、これからの拡がりが非常に楽しみなプロジェクト。
■Coworkingの繋がりによって想定した以上のことをすすめることが
自分の事例紹介のようになってしまい、恐縮な気分でもあるが、2010年にPAX Coworkingと出会ったこと、そして2011年7月に入居してPAXヘビーユーザーになってから、その1ユーザーがCoworkingを活用してどのような仕事をしているか?という視点でご覧いただければと思う。
それにしても様々なプロジェクトが僅か半年の間で怒涛のように進み、独立当初は「長期的にはこうなったらいいな」と思っていたビジョンに向かって少しずついろいろなモノが具体化…進行しているスピードは自分でも呆れるほど。
ユーザーインターフェースデザインという他者とのコラボが重要となる職種において、フリーランスとして独立することを促したのはCoworkingの存在である。そしてCoworkingスペースのコミュニティをホームとさせていただくことによって多くの方々との出会い・コラボの機会に恵まれ、述べてきたように急速にカタチが作られてきた。
Coworkingは今の僕の仕事にとって、無くてはならないものとなっている。